検索

有限会社ナスカ一級建築士事務所
162-0052 東京都新宿区戸山3-15-1 日本駐車ビル4F
T 03-5272-4808 F 03-5272-4021

遷移する都市

脳があらかじめ役割の定まったパーツの集合体ではなく、細胞の集まりである脳全体として機能するうちに、次第に各部分の機能が分化するように、都市も極め て動的に成長、推移するうちに次第に場所固有の働きが定まってくると考えられるのではないだろうか。あらかじめ用途に分けてあまりに厳密に計画されたもの は、都市や産業の構造が大きく変化すると初期の機能を果たさなくなる。都市が多重価値的に働くためには、その柔軟な骨格とともに、都市が状況に応じて遷移 していくことについて、十分に考察を加えるべきである。地方都市のいたるところで、中心市街の混雑緩和のためにバイパス道路を郊外に通したために、既存商 店街が一様に衰退している。あるいは輸送が水運から陸上に転移するとともに、港湾から活気が失せて倉庫群が廃物化した。工場誘致を見込んで埋め立てられた工業用地、大学誘致を見込んだ学園とし、人口増を当て込んだ郊外ニュータウン、いずれも都市の特定の機能に特化して計画 されたものだ。計画に長く時間のかかるものほど、社会の動きに追随できなくなる。そしてそれらは基本的にすべて、資本主義経済下の価値基準によって計画が 推進されたり、中止されたりしてきた。草原が次第に林へ、林が次第に森へと遷移する。鬱蒼と繁茂した森林では地上面から樹上へとその高さに応じた生態系が 動的に形成されている。その森林はさらに河口を通じて付近の海の生態系ともつながっている。都市はその連鎖から学ぶものが多い。