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有限会社ナスカ一級建築士事務所
162-0052 東京都新宿区戸山3-15-1 日本駐車ビル4F
T 03-5272-4808 F 03-5272-4021

近藤内科病院Kondo Hospital

徳島県徳島市西新浜町1-6-25

設計 古谷誠章+NASCA
用途 病院
構造 RC
規模 地上4
敷地 6.039.97㎡
延床 4,079.05㎡
竣工 2002.03
受賞 2004年 日本建築学会作品選奨
掲載 新建築2002.12

県道の拡幅工事により、元の敷地の道を挟んだちょうど真向いへ移転した内科病院で、この機会に主として末期ガン患者のための、徳島県内初の緩和ケア病棟 20床を併設した。一般病棟35床と合わせて55床の個人病院である。院長夫妻と共に移転先の用地を選ぶことから始め、市内7ヶ所以上の候補地を順次検討した結果、紆余曲折を経て最終的にこの土地に辿り着いた。
南側の道路が将来は高架となるため、建物配置をやや道路から北側に引き離して、前面に駐車場を置き、数種の樹木を列ごとに花や紅葉の見頃が訪れるように植えてある。南北立面は4本の四角いチューブが断面を見せて並ぶ造形で、病院内の様子が表からもうかがえ、また院内からは南側は表の通り、北側では園瀬川などの景色が眺められる。正面に向かって右手に一般内科の外来入口、左手に緩和ケア科の入口があって、両者が画然とではなく緩やかに分かれたものとした。2・3階の病棟からの避難階段を正面に突出させたのは、日頃人びとの目に触れぬ非常階段は万一の際役に立ちにくいからである。
これに対し東西の両立面では、権造体である壁柱をそのまま並べたデザインで、その厚さも奏効して開放感をもちつつ適度に視界が遮られる短冊状の連続縦長窓ができた。
1階が外来の診察と検査部門や裏方など, 2 3階がそれぞれ病室階である。ほぼ真四角な3層の平面形のため、当然その中央は窓から遠いアンコの部分となってしまう。ここに四方の廊下に緩やかにつながるルーズなナースステーションを置き、そこに2本のライトウェルや上下動線なども通して、できるだけ暗がりや閉塞感を生じないようプランを工夫した。余裕のあるこのステーシヨンには心細がった患者がベッドごと搬送され、一晩「泊まって」いったとともある。
3階のホスピスでは全室が個室、2階の内科病棟では15室を個室とし、残りの多床室は東西の両側に各10床ずつ、われわれが「サンデッキ型病床」と名づけた患者同士が隣り合わせになり、全員が足先を窓側に向けて並ぶ新しい多床室プランを試みた。ベッドに横になったときの足の向こうに他人ではなく縦長の自分の窓が見えることで、ぐんとパーソナル化して同室者が気にならない感じになる。3階北西角のラウンジからは「ホスピスの庭」や川の夕陽などが眺められ、オープンキッチンなどもあって、患者同士や家族との会話の場所となっている。各機能に区分されてしまうスペースを効率化し、その分を割り振って全体に面積的な余裕を生み出した。

撮影 松岡 満男