高崎市立桜山小学校Sakurayama Elementary School, Takasaki
群馬県高崎市棟高町2489−1
設計 | 古谷誠章+NASCA |
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用途 | 小学校 |
規模 | 地上2 |
敷地 | 25,953m2 |
延床 | 9,450m2 |
竣工 | 2009.03 |
受賞 | 2006.設計プロポーザル最優秀賞、2011.日本建築学会作品選奨 |
掲載 | 新建築2009.07、GA JAPAN99、近代建築2009.09 |
ふたつの校舎の共有
住民増による分離新設校で元の学校とは約600mの距離にある。しかもちょうどお誂え向きに、その2校を1本の川が結ぶ。とっさに分離後も2校の児童が行ったり来たりできる「分離後の2学区がふたつの校舎を共有する」アイディアを思いついた。新しい学校には元の学校にはない空間をつくり、こちらにない空間は、元の学校にあるというものだ。
地家との呼応、行き止まりや裏のない学校
校舎の形は土地の傾斜を活かして、この川沿いに「たなびく」ようにつくる。付近の田畑の水平線や遠い山並みとも呼応させたい。そこから2階建ての低層の立面が自然と導き出されたが、これによって1年から6年までの教室を同じ階に置くことができた。特別支援学級を含む全学年が交じり合うように生活し、日常的な異学年交流が促されるよう期待している。1階には特別教室や図書室、会議室など、地域開放可能な諸室を配置して、こちらは地域住民との日常的な交流に寄与するように考えた。この学校には東南を除くその他の3方向から子供たちが通ってくる。それぞれが校地の角から直接入れるよう、つまり塀沿いを長々と歩かないですむように3つの角に出入り口を設け、校舎にいる大人が自然とそれらに目配りできるよう、どこにも「裏」ができない校舎配置を工夫した。教室とオープンスペースを合わせたスパンは15.4m×15.4mで、その3倍を1辺としたジグザグ型をつくり、これを1本の南北廊下が貫く構成として校舎のすべてに行き止まりのない回遊性を持たせている。いざとなればどっちへも逃げられるプランだ。もちろん使い方次第で日常的にもさまざまなメリットを生むだろう。
共に学ぶ生活の舞台
学校は児童だけでなく、教職員にとっても1日の長い時間を過ごす「生活の舞台」だ。昨年、研究室の学生のひとりが、「寺子屋」がどんな空間だったかに興味を抱いて卒論に取り組んだ。なかなか資料が見つからず、まだ研究の途上だが、一枚の絵からは同じ板の間に年齢の違う子供が交じり合い、共に学び合っている情景が目に浮かぶ。この学校を地域に暮らす多くの人びとが支え、たびたび元の学校とも友だちが行き来する、そんな場所に少しずつ育ってほしいと願っている。
撮影 淺川 敏