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有限会社ナスカ一級建築士事務所
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富谷市複合図書館 ユートミヤTomiya City Library And Complex Facilities

宮城県富谷市成田1-1-1

設計 ナスカ+はりゅうウッドスタジオ設計共同体
用途 図書館・子育て支援施設・カフェ・物販
構造 RC+S
規模 地上2
敷地 13,418.18㎡
延床 3,230.22㎡
竣工 2026.02
受賞 2022年 富谷市民図書館等複合施設整備基本設計プロポーザル最優秀賞

富谷市は仙台圏北部の丘陵地に形成された郊外都市である。平均年齢43歳、持ち家率83%、宮城でも数少ない人口増加の富谷市は「住みたくなるまち日本一」を目指している。1980~90年代に造成されたニュータウンは成熟期を迎え、市民が自ら集い、活動し、まちへの帰属意識を育むことのできる「市民の居場所」が求められ、2016年の市制施行以降、市民待望の図書館整備が進められてきた。さらに、「スイーツのまち」というシティブランドや、子育て支援への需要を背景として、本計画は図書館、スイーツステーション、屋内児童遊戯施設を併設する複合公共施設として既存公民館の敷地内に計画された。2022年の公募型設計者選定プロポーザルの基本方針には、「未来をつくる市民の、市民による、市民のための知の広場」と標榜されていた。
私たちは、この施設を単なる機能複合ではなく、隣接する既存公民館と縁側空間によって緩やかに接続された市民の日常に開かれた拠点として提案した。多世代の市民が自然に立ち寄り、思い思いに過ごし、活動を共有する「富谷の居間」である。
近年、北欧を中心に、図書館を「アーバンリビングルーム」として捉える考え方が広がっている。本施設でも「富谷の居間」という構想のもと、「滞在」を施設の中心的価値として位置づけた。
現代都市において、人が自由に滞在できる場所の多くは商業空間に依存している。しかし、ここでは、消費を伴わなくても、ただ居ること自体が許容される公共空間を目指した。静かに過ごすことも、賑わいの中に身を置くこともできる。その自由さこそが、「富谷の居間」という考え方の根幹にある。
ブックスロープとメディアラウンジを中心に、「どこでも図書館」「どこでもスイーツ」「どこでも児童遊戯」と用途がシャッフルされた広場空間とした。異なる活動が平面・断面方向に重なりあい、互いの気配や存在を感じながら過ごすことで、滞在は、他者との共在へと開かれていく。人々が繰り返し訪れ、それぞれの過ごし方を積み重ねることで、公共空間への愛着や地域への帰属意識が醸成される。そのような、生活に開かれた新しい公共空間の姿を、この場所に重ねた。
 設計中に行った度重なる市民ワークショップでは、この考え方に共鳴し、私たちの提案を自分ごととして増幅する市民たちの勢いと、それを受け入れる行政の寛容性と覚悟を感じた。待ちきれない市民たちがこの建築を末永く愛し、融通無碍に使い倒し、この空間が人々に彩りを添える「知の広場」となることを願っている。
開館から2ヶ月。すでにこの場所は、「富谷の居間」として動き出している。カフェの食器が触れ合う音がどこからか聞こえ、子供たちの声が吹き抜けを伝わってくる。 本を読む人、学ぶ人、待ち合わせをする人、ただ居る人。それぞれが互いの存在を感じながら同じ空間を共有している。デジタル化によって個人の情報環境が閉じていく時代だからこそ、偶然に他者と出会い、同じ場所に身を置くことの価値はむしろ高まっているように思える。
夜20時を過ぎる頃、日中のにぎわいを受け止めていた広場は、静寂の図書館へと表情を変える。その静けさは、一日の活動の余韻を包み込んでいる。人々の営みによって育まれるこの場所は、少しずつ富谷の日常の一部になりつつある。

撮影 淺川 敏