LUPICIA京都寺町三条店LUPICIA Kyoto Teramachi-Sanjo Store
京都府京都市中京区 三条上天性寺前町 530
設計 | 古谷誠章+NASCA |
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用途 | 店舗 |
規模 | 地上1 |
延床 | 231㎡ |
竣工 | 2010.11 |
掲載 | 商店建築 2011.9 |
京都は古都であると同時に、日本や世界の各地から多くの若者の集まる街でもある。寺町三条はその中でも、京都の古くからの雰囲気と新しさが交錯する親しみやすい場所だ。この店はそんな街を訪れる人たちに、日本や世界のお茶の香りに、身近に触れてもらうためにデザインした。また今後のルシピア社のある種のグレードの高い店舗展開に対する、ショップデザインのコンセプトづくりを期待されたものでもあり、京都に次ぐ仙台の店(24年3月開店予定)も念頭に入れて構想を練った。
間口に対して奥行きの長い空間は、古くからの町屋のそれを彷彿とさせる。通り庭や、明かり取りの坪庭、格子や箱階段といった伝統的な町屋のボキャブラリーを、単純化した上で新しい「ミセ」の空間に再構成している。戸口から左手の壁に沿って延びる茶缶のディスプレイは、このショップの特徴である無数かと思われる茶の種類の多さを視覚的に印象づけるものとして、できるだけ長くデザインし、その背景を皺加工したステンレスメッシュ仕上げの継ぎ目のない光の帯としている。その上段の設備などを格納した下がり壁には、商品である丸い茶缶とぴったり同じ大きさの円形の照明を組み込み、これを「一二三石」のように一つ、二つ、三つと散りばめた。今後はこのパターンを一つのショップアイコンにして行きたいと考えている。
そこの「通り庭」に対し右手に広がる空間はいわば「店」の部分となり、ディスプレイ台やレジ台などが言わば帳場の家具のようにアレンジした。茶箱を収めた箱段や飾り棚などを使って、店からのメッセージの発信や四季の移ろいが演出され、最奥にある坪庭のコーナーでは、美しい吉野杉の無垢材のテーブルで様々な香りのお茶の試飲が楽しめる。
撮影 淺川 敏