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有限会社ナスカ一級建築士事務所
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道の駅きょなん「やぐら茶屋」

千葉県安房郡鋸南町吉浜517-1(道の駅きょなん・観光物産センター内)

設計 桔川卓也/NASCA
竣工 2026.02

敷地は千葉県鋸南町。私たちが設計した「道の駅保田小学校」から2km程度に位置する「道の駅きょなん」の改修計画である。1985年に供用を開始した既存施設には、飲食店や物産館などのテナントが並ぶが、主要な正面入口が日照に恵まれない北側を向いているため、経年による老朽化も相まって来訪者に閉鎖的な印象を与えていた。本プロジェクトでは、この空間を明るく開放し、新たなにぎわいを創出することを目指して改修を行っている。
既存の廊下空間は外壁と天井を撤去することで、各テナントへのアクセス性を向上させるとともに、木構造を露出とした開放感のあるデザインへと刷新した。その前面に広がる新設スペースには、多様なアクティビティを許容するための一定の無柱空間が求められた。そこで、流通性とコストに配慮した105mm角の一般材のみで構造を成立させるべく、2本の抱き合わせを基本単位としつつ、負荷の大きい箇所には3本以上の「抱き合わせ柱・抱き合わせ梁」を採用することで耐力と剛性の最適化をしている。
接合部は特殊金物を使わずボルト・木ビスを用いて、柱脚は隣り合うRC造立ち上がりとの接合高さを離すことで曲げ拘束を確保し、柱頭は柱を抱き込んで前後に梁接合部を設けることでスタンスを確保している。なお、立ち上がりのコンクリートは105mm角の木材に合わせて105mm角を基準としているが、通常配筋ではかぶり厚さが不足するため、亜鉛メッキ塗装を施した「溶接一体型の鉄筋フレーム」を製作・施工している。
構造設計者との幾度にもわたる検証を経て導き出されたこの架構形式は、単なる骨組みの域を超え、空間全体を包み込む有機的な「やぐら」へと昇華された。この「やぐら」はサイン計画のモチーフにもなり、格子状のロゴマークや縦書きのタイポグラフィによる一貫したデザインを形成している。また、隣接する菱川師宣記念館が収蔵する「見返り美人図」をはじめとした浮世絵のグラフィックを引用することで、地域の歴史文化と空間との一体感を生み出すブランディングを行った。
やぐら空間には、主要構造材と同じ105mm角の材を用いて、ランチを楽しめるテーブルや山々を眺めるスタンディングカウンター、子供たちが遊べるブランコなどを配置した。縦横に連なり「やぐら」を構成する木のフレームは、広場での様々なイベントや日常的なふるまいの支えとなり、多様な居場所を創出している。木構造の質感を介して新旧が呼応し、老若男女が思い思いに過ごせるこの場所は、施設全体に温もりに包まれた新たなにぎわいをもたらしている。
「道の駅 保田小学校」の竣工から約10年。次年度は同施設の事業戦略の中で、この「道の駅 きょなん」も含めた町全体の総合計画が策定される予定である。私たちは、設計して終わりではなく、完成後も運営や戦略に関わり続けることで、町の未来を共に創り出すパートナーでありたいと考えている。

 

撮影 淺川 敏